見出し画像

「ArtSticker」が舞台芸術に参入。 新たなコラボレーションで生まれる、第4の収入源とは

今年の6月から、現代アート作品に加え、演劇やダンスなどの舞台芸術にもスティッカーを送ることが可能になった「ArtSticker」。

なぜArtStickerで支援可能に至ったのか、また、舞台芸術として表現を重ねていく表現者たちにとって、ArtStickerとのコラボレーションはどのようなシナジーを生み出していくのか。
「京都に100年続く小劇場を!」を合言葉にクラウドファンディングで資金調達を行い設立に至った、「THEATRE E9 KYOTO(※)」支配人の蔭山 陽太さんにお話を伺いました。

限られている舞台芸術界の収入源の中、キーとなるのは「支援」という価値観

ー まず、現代アートと舞台芸術とで収入源は全く異なりますが、舞台芸術での収入源はどのような仕組みになっているのでしょうか?

蔭山:舞台芸術界の現状では、以下の3つが主な収入源として挙げられます。

①チケット販売収入
②文化庁等の公的助成
③自己資金(アルバイト等により貯めたお金)

舞台芸術の場合、様々な形態があるのですが、基本的には①のチケット販売収入がメインになります。
美術品のように、作品を創った後も残り続けるといったことがない「生の舞台」なので、公演期間が終わった後でチケットを売ることはできません。つまりチケット単価×客席数×公演回数=販売可能席数が上限となるので、それ以上の収入を期待することは出来ません。

②は文化芸術振興を目的に文化庁などが主に公演の赤字分の一部を補填する助成金ですが、申請から受給までとても多くの時間と労力がかかります。また限られた予算枠に多くの団体が応募するため、獲得は容易ではありません。カンパニーや劇場の総数を分母とすると宝くじのようなものと言えるかもしれません。

③の自己資金については、実質的な公演の赤字を個人的に背負うものであり、そもそも収入源とすることに無理があると言わざるを得ません。

さらに、劇団には「入会するとチケット代が割引になる」という会員制度を採用しているところも多いのですが、例えば観客の全員が会員になった場合、満席になっても割引価格になってしまうので定価分のお金が入ってこない。つまり、会員を増やせば増やすほど、劇団にとっての収入は減ってしまうんです。

これに対して私が以前、文化庁の在外研修制度でロンドン滞在中に劇場の会員制度を調べたところ、それらの多くは日本とは逆に「通常よりも高い値段を払う」というシステムになっていました。
「いいお芝居や、いい舞台作品を創ってね。私たちは期待していますから、援助しますよ。」という方々に向けてのもの。つまりそれは、支援なんですね。


アーティスト側が創っている作品に対して鑑賞する側は、プライスレスな価値を求めています。たまたまそれがチケット1枚いくら、という風に最初から値段が設定されているために鑑賞する側はその価格で買うわけですが、たとえば美術品の場合、アーティストの作品に対して自分にとって価値があると思えば、高額の対価を支払う方はいらっしゃいますよね。

つまり、アーティストと鑑賞者の間の直接的な関係によって、それぞれの価値観によって価格が変わってくる、ということです。では、舞台芸術でもそれができないのだろうか、と。


「ArtSticker」は、日本古くからある「おひねり」や「木戸銭」に近い文化

ー 海外と日本で、ずいぶん異なるのですね。けれど、日本でもそのような価値観を持っている方はたくさんいる気がします。

これが、実は日本では古くからあって。それはたとえば、おひねりや木戸銭という文化です。
おひねりは舞台を観に行って、お金を好きな金額包んで舞台に投げる、大衆演劇なんかでは今でもよく見られるものです。
そして木戸銭。時代劇などで当時の人が、芝居小屋の入り口で「寄ってらっしゃいみてらっしゃい、お代は観てのおかえりだい」と声をかけている風景、見たことないですか。これがまさに木戸銭で、いわゆる入場料金なのですが、「とりあえず観て、面白かったらお金を払って帰ってね。」というメッセージが込められたものなんです。

つまり、ここにはチケット単価×販売可能席数が上限とならず、より収入が上がるシステムがあるんですね。チケット料金以外に、面白いと思ったならば、あるいはその舞台や演者を支援したいと思えば、お金を払う。

なので、そういう意味ではArtStickerは、おひねりや木戸銭に近いですよね。観に来てくださっている方で、「すごく面白かったから本当はもっと払いたい」とか「こんなに面白いものを見せてもらってこの値段でいいの?」という方もいらっしゃる中でArtStickerがあると、観賞者と演者の窓口ができるんです。

その瞬間にしか味わうことが出来ない「生もの」である舞台芸術を観た後に、例えば電車の中で感想を書きながら直接支援が出来る、というのはとても画期的ですし、舞台芸術におけるチケット収入、助成金、自己資金以外にもう一つ、第4の収入源としての道をつくってくれるものだと思っています。
これは今までになかったシステムなのでぜひ、舞台芸術でも動きが広がっていくといいなと思いますね。


ArtStickerは今後、よりたくさんの劇団・ダンスカンパニーにご参加いただくことで、参加者側にとっても、また観ているユーザー側にとっても、新たな楽しみや選択肢を広げる場所でありたいと考えています。
ご参加いただける方、少しでもご興味のある方はぜひ、お気軽にメッセージをお待ちしています!
support@artsticker.app


※THEATRE E9 KYOTO
「100年つづく劇場をつくろう。このプロジェクトは、京都市内で、5つの小劇場が閉館したことを、私たちは危機と受け止めてはじめたものです。一歩一歩ではありましたが、ご協力くださる仲間が増え、支援の輪が地域や時に国を超えて広がり、10代から80代までの世代の方々に支えていただきながら、2019年6月に開館を迎えられる運びとなりました。劇場のほか、カフェと、コワーキングスペースを併設しています。
これから始まる新たなドラマを皆様と共に作り上げられますよう、改めてそして、切にお願い申し上げます。
ーTHEATRE E9 KYOTO芸術監督 あごうさとし」


<GUEST PROFILE>

蔭山陽太(かげやま ようた)
1964年、京都市生まれ。大阪市立大学経済学部(中退)。86年~90年、札幌市内の日本料理店にて板前として働いた後、90年~96年、株式会社「俳優座劇場」劇場部。96年~2006年、「文学座」演劇制作部。02年に企画事業部を新設、同部長。翌年、演劇制作部を企画事業部に統合、同部長。06年~10年、長野県松本市立「まつもと市民芸術館」プロデューサー/支配人。10年~13年、神奈川県立「KAAT 神奈川芸術劇場」支配人。13年~18年、京都市立「ロームシアター京都」支配人/エグゼクティブディレクター。19年~「THEATRE E9 KYOTO」支配人。

19年~「京都精華大学」ポピュラーカルチャー学部 非常勤講師。
17年~「一般社団法人アーツシード京都」理事。
18年~「寺田倉庫」京都エリア担当プロデューサー/コーディネーター。
98年度、文化庁在外研修員(ロンドン)

Please follow us!
Instagram
Twitter
Facebook

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

TCMは「世の中の体温をあげる」という想いをかかげ、「Soup Stock Tokyo」等を手がけてきた遠山が構想する「新たなアート体験」に、PARTYが得意とする「デジタルでの体験設計」を融合させ、アートと個人の関係をテクノロジーで変革させ、新たな価値の提示を目指しています。

ありがとうございます!
14

The Chain Museum

The Chain Museumは、遠山正道×クリエイター集団PARTYが新たに発信する  「アートの次のあり方をつくる」プロジェクトです。 アーティスト支援アプリの「ArtSticker」を運営しています。 https://artsticker.app/

Special Article of Art

アーティストインタビューなど、ArtStickerやThe Chain Museum独自のアートに関するコンテンツ
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。