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陶芸技術を携え、現代アートに新たな熱狂を生み出すアーティスト・古賀崇洋インタビュー

〜古賀崇洋(こが たかひろ)〜

1987年   福岡県出身
2010年   佐賀大学文化教育学部美術・工芸課程 卒業
2011年   鹿児島県長島町にて作陶
2017年   福岡県那珂川町、鹿児島県長島町で工房を構える

継承されてきた技法、伝統を踏襲しながら現代を生きる自分にしかできない表現を模索している。画一化し、窮屈さを求める社会に対するカウンターとしての個性と質を兼ね備えた地域工芸のあり方を探り、そのための価値観を育て、意思を持って発信し続ける。その志と誇りの意思を形にしたのが古賀の焼物である。代表作に無数のスタッズを施した器、オブジェ等の『SPIKY series』、鎧をモチーフにした装着する器、『頬鎧盃』などがあり、個展を中心に海外アートフェア、パリ、ミラノ国際見本市、人気漫画、アパレルブランドコラボ等、活動も幅広く、国内外で高い評価を受けている。


今の作品は、試行錯誤の賜物。
先人たちの文化を踏襲しつつ、新たな発想で現代アートに食い込める可能性を探りつづけた

ー古賀さんと言えばやはり、スタッズのついた器がトレードマークだと思うのですが、斬新に見える中にもどこか、例えば壺の形というのが、割とクラシックな感じもあるのかなと拝見した時に思って。クラシックなところと、前衛的なところと両方を併せ持っているような作品だなと思ったのですが。

古賀:焼き物という、縄文時代、一万年以上前から出土しているフォルムが、同じ形状で長い間ずっと作られているのにはやっぱり意味があると思うんです。
斬新な形を追い求めすぎて焼き物という素材で無理を強いる形状よりも、焼き物としての普遍的なフォルム(碗状、皿状、鉢状、壺状など)でしっかりと美しい形を追い求めつつ、長く愛されている形の意味、技術、歴史を踏襲しながら焼き物を作ることが、一番説得力があると考えてます。なので、意外と大元としては古典的なものが多いですね。その上で自分の表現(スタッズ、ロッド、炎形など)プラスしていってます。
なのでクラシックな部分と前衛的な部分を感じさせるのかもしれません。


ー古典的なものにスタッズを付けるっていう発想に至るまで、最初からこういう作風でいらしたのか、それとも試行錯誤の上でなったのか、どちらなのですか?

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古賀:完全に試行錯誤ですね。何かが降りてきた訳でもなく、色々と試し試しやっていくうちに今の形になりました。

元々、「ものに在る力を可視化する」と言うテーマにいきついたのも、韓国のサムスン美術館で出会った壺がきっかけでした。そこに、陶芸家がお手本とするべき壺といわれる作品があるんですよ。陶芸家として一応記念に見ておこうかな、くらいの気軽な気持ちで見に行ったら、初めて壺というもの感動して。それが原点になっています。

焼き物自体は学生の時からやってたのですが、それまで壺といった物は、少し古くさいというか、おばあちゃん家にあるものみたいな感じで、正直あまり真剣には向き合ったことがなくて。それまではエッジが効いた、シュッとした流線形のフォルムのオブジェばかりを作っていたんですけど、その壺に出会ってから考え方が変わりました。


ーその壺のどんなところに衝撃を受けたのですか?

古賀:当時、制作に対して悩んでいた時期でもあったんですけれど、その作品に出会った時にとてつもない力を感じたんです。
現代って、壺状の焼き物を作るときは手捻りを除いては、大体みんな電動ろくろなんですよ。電動ろくろって簡単にスピード調整できて、パワーがあるので、凄く便利に制作が出来るんですよね。他にも便利な道具が沢山あって電気窯やガス窯、灯油窯とか燃料もいろいろなものがあって。
けれど、この壺が作られた当時は薪を配る窯しかないし、ろくろももちろん電動なんかじゃなくて自分や第三者の誰かがずっと足で蹴りながら回して、本当にフィジカルな作り方だったと思うんですよ。だから、その作品は形も綺麗な同心円状じゃないんですよね。左右非対称というか、味があるというか、ちょっとゆがんでいたりですね。
でも美しいんです。美しくまとめられているんです。
その時に作り手の拘り、熱量、完成度、時代を何百年と経てきた重み、ここに在るという力強さを物凄く感じて。
帰国後すぐに壺に挑戦し始めたんです。
しかし、自分が作るものが韓国で見たその壺よりも全然格好よく仕上げられなくて。敢えて歪みだったりを入れることもできたんですけど、どうしても作為を感じてしまって、何度挑戦しても納得できる素直な美しいフォルムにどうしてもならなかったんです。
そういった中であの時壺から感じたパワーとか、なぜ自分はこの壺に惹かれたんだろうという思いをなんとかして可視化しようと思ったんです。

パワーってどんな表現だろう、と考え、四角柱や円柱、球体を付けたり、三角の刺刺をたくさん付けたり。逆に彫ったり、泥を投げつけたりとか。
そこが今の作品の始まりです。


ー力強さを可視化しようとした、内的な部分から出来上がっているのは驚きでした。

古賀:スタッズって、現代ではファッションアイテムとして見られがちなんですけど、もっと人間の奥底にある何かだと思うんですよ。例えば中国の青銅器についてなんですが、
「殷・周〜」長いこと様々な王朝があるじゃないですか。その殷の前に「夏」という王朝があったんですけれど、夏の時代に青銅器を作る技術がもうその時にあって、紀元前三千年以上前ですよ。今から約五千年以上前の青銅器にスタッズがめちゃくちゃついてるものとかあるんですよ。それは確実に今の僕らのスタッズの概念とは全然違って、その装飾的な意味合いというのはやっぱり、力強さだったり何かの欲望だったり、呪術的なものがあったんだと思います。

だから僕はスタッズというのは視覚的にも触覚的にも物凄く刺激的なフォルムで、強い、恐い、痛い、っていうのは何かの力が働いてると考えたんです。そこから転じて自分の作品に置いてスタッズ=力だと定義しました。

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ー陶芸って元々、工芸的な側面が大きいと思うのですが、古賀さんは現代アートに陶芸を生かして活躍されているところが素晴らしいなって思っています。先ほどもおっしゃっていたように、クラッシックなモチーフを現代的に解釈されていますが、その意義と今後の展望について伺えますか。

古賀:元々、現代アートの文脈を勉強したりとかそこに憧れを抱きつつも、やっぱり焼き物という存在に強く惹かれていたんですね。焼き物って素材、技術、プロセスっていうのが絶対であり、おざなりにできない根幹部分になってるので、そこを修行し続けていたので、意外とずっと、地味な大学4年間を過ごしていました(笑)
けれどその中でも焼き物で現代アートに接近する何かはあるのではないかと毎日悶々と思い続けながら制作を続けてはいましたね。

現代アートってやっぱり欧米が主流で、さらにファインアートが中心ですよね。まず工芸という分野で戦っている人が少ないな、という印象です。自分がやっていることで現代アートに切り込んでも別にいいじゃないかという思いがあったので、どのように昇華させていくか模索している段階でもあります。そこをしっかり掴むことができたら、焼き物で今までとは違った現代アートの側面を見出せると思っています。
焼き物って世界中にあるんですけれど、日本、中国、朝鮮といった東アジアというのは特に発展しているんです。その中でも日本の工芸に対する価値観って世界トップクラスの層なんです。まずは世界のどの国よりも陶芸家の人数(割合)が多い。民芸運動が起こったり、オブジェ焼きというそれまでと違った焼き物が出てきたり。そもそも食文化においても日本は器の種類がが物凄く多いですよね。小鉢だったり横付けだったり、魚皿、ご飯茶碗・・。
しかも、例えば味噌汁碗のように食事をする際、器に直接口を付けることが多い。だから、器に対する愛着が全然違うんですよね。

海外のようにプレート1枚で、口に付けることも無く、ナイフやフォーク、スプーンを使って完結する食文化と比べると器という存在がすごく近いものと捉えられているんです。
大学時代に1か月ほど、スペインへ行って教授と一緒に制作していたことがあって、スペインは窯材や陶芸の基本原料、焼き物をつくる環境が全然発展していなかったんです。現地の方々は日本人の技術だったり精神性を学ぼうとよく質問され、些細なことまで聞いてきました。また、陶芸に関する名称や技法が日本語のまま伝来されてました。ありがたいことに物凄くリスペクトがあったんです。あくまで僕ではなく日本の先人が築いてきた伝統がなんですが。

その時に、日本の焼き物というのは世界で通用するんじゃないかと感じたんです。現代アート、ファインアートは欧米が主流ですが、工芸に関しては日本が主流で、こちらのルールでいけると。日本独自のモノとコト。先人たちが積んできた縄文時代から現代に至る文化の集積を踏襲しながら、現代の日本に生まれた僕ができる新しい焼き物。そこに現代アートに食い込む余地はあるじゃないかって思うようになりました。今後はさらに焼物の可能性を探っていきたいですし、現代アートに接近していきたいですね。

しかも、例えば味噌汁碗のように食事をする際、器に直接口を付けることが多い。だから、器に対する愛着が全然違うんですよね。海外のナイフとフォーク、スプーンを使う文化と比べると器という存在がすごく近いものと捉えられているんです。

そういった中で大学時代に1か月ほど、スペインへ行って教授と一緒に制作していたときがあって、スペインは溶剤や材料から、焼き物をつくる環境が全然発展していなくて、日本人の技術だったり精神性を聞いてみたいと、ありがたいことに向こうの方が物凄くリスペクトしてくださって。

その時に、日本の焼き物というのは世界で通用するんじゃないかと感じたので、歴史や先人たちが積んできた縄文時代からの文化の集積を踏襲しながら、現代の日本に生まれた僕は何かしら、現代アートに食い込める余地はあるじゃないかっていうので、これからもずっと挑戦していくって感じですね。


モノよりコトが強い日本。
現代アートはその精神性にこそ価値が宿るもの

古賀:日本においては、「モノ」ももちろんですが「コト」という要素がすごく強いと思うんです。様式だったりとか、例えば茶道とかもそうですけれど、お抹茶碗たった一つが恐ろしく値が張るのって、普通ではあまり考えられないことですよね。
でもそれって、そこには精神性が含まれているからなんですね。一見するとなんの変哲もない碗には、先人達、作者の精神がつまっている。それはもう、「モノ」でなく「コト」の分野なんです。茶道については例ですが、縄文時代からある焼き物をさまざまな時代、ジャンル等因数分解していくと、まだまだいろんな切り口ってあると思うんです。

現代アートでも同じことで、単なる原価計算とかじゃなくて、精神性やコンセプト、意匠を作品に込めて、そこにみんな価値を感じているんですよね。


ーそういった中で、古賀さんの頬鎧盃はまさに、伝統的な工芸に新しい価値を生み出しましたよね。

古賀:頬鎧盃は、「飲んで、装着する器」という新しいプロダクトだと思っています。普通、器って飲むという機能だけじゃないですか。そこからさらに「装着する」というものは、世界でもこれまでにないなと。形状によって新しい動きを誘導するとことがすごく面白いなとも思います。

鎌倉時代〜江戸時代にかけて、すごく日本独自の文化が形成されたというか、それまで平安京や寝殿造などの中国文化が中心だったものから、現在の日本人のDNAに通ずるような価値観の完成形に向かってきている時代だと思うんですよ。

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さらに僕が注目しているのは室町から桃山にかけてなんです。茶の湯が完成されていく期間です。猛々しい戦国武将達がこぞって茶道を嗜んだ時期ですね。茶の湯と戦は『静と動』で相反する美学だと思うのですが、その期間に双方一番発展したというのが不思議で面白いですよね。

元々歴史好きだったのもありますが、焼き物をやっている以上僕の中ではその時代というのは避けては通れないところでした。当時、武家の教養として発展した日本の総合芸術、茶の湯。その系譜を汲んだ懐石の器として発展した酒器。茶の湯と戦国武将と工芸、特に焼物との密接な繋がりから必然的に導いた頬鎧のフォルムをした磁器盃という関係性を『頬鎧盃』という新しいプロダクトととして表現しました。

だから、この頬鎧盃もなにかフッと降りてきたというよりも、自分が日々勉強してきたことや実践していること、興味のあることが一気接近し、ある時に交差するタイミングがあるんですよね。そうやってアイディア含め制作してます。


人々が熱狂できる文化を醸成できるような
クリエイティブを生み出していきたい

古賀:アメリカでは、『新しい』という言葉が一番の評価なんです。僕の場合、作る仕事なのでクリエイティブだとか周りに言われるんですけど、自分のこれまでやってきたことがクリエイティブだって感じたことが実はあまりなくて。

言うなれば縄文時代から続く土を使った焼き物で、素材、技術、プロセスなんて先人達の教え僕の中では何一つ新しいことをしていないし、多分99.98パーセントぐらいは先人の教え通りに作っていて、無視できないセオリーや工程に従って作品を制作してきたんですね。そうすると必然と形は限られてくるんです。例えば器だったら食べ物や水分が溢れない重力に逆らった形。いわゆる碗形ですよね。壺や鉢など全て普遍的な形なんです。オブジェにしても焼き物という素材で可能な形状は意外と限られてくる。だからその中で新しい物を生み出すのは本当に大変な作業だなと思っていて。

なので頬鎧盃に関しては「飲んで、装着する」という『新しい』ジャンル創出に挑戦し、初めて世に『新しい』価値観を生み出せたかなと、本当の意味でクリエイティブな仕事が出来たかな、と思っています。こういった仕事を人生でいくつか作っていけたらなと思っています。

作品を作ることって、正直多分ちょっと器用な人だったら誰でもできると思うんですよ。
でも「文化を作る」というのはとても難しくて、僕はそれが一番のクリエーションだと考えてます。それによって人々が熱狂したり、そのジャンルで興じたり、新しい様式ができたり。作品を中心に人が動く、文化ができる。そこまで行くと面白い現象なんじゃないかなと思うので、そこを現代アートとして目指していきたいですね。

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ーあの東京喰種のマスクもやっていらっしゃいますよね。

古賀:2019年に、人気漫画東京喰種の実写映画、東京喰種2の公開に合わせて、全国のPARCOさんで東京喰種カフェを開くという企画があったんです。映画の世界観に合わせてグロめの内容にはなるのですが、血だらけの肉とか、人体のパーツを模した料理やドリンクが出てくるというちょっと衝撃的なメニューで原作ファンを中心に大人気の企画だったんですが
その際に企画担当の方が僕の頬鎧盃作品を知って頂いてて、主人公の金木研というキャラクターの大事なマスクがあるのですが、そのマスクを模したドリンクを飲む頬鎧盃を作ってくれないか、という打診がありました。


ー古賀さんの知名度的に非常に大きな影響があったと。

古賀:そうですね。改めて、やはり漫画、映画、アニメなどのエンタメの力はすごいなと感じました。世界中で圧倒的に人々を熱狂させていますよね。

知人に大手音楽レーベルの方がいて、僕の作品をご購入頂いて海外アーティストの方にお土産としてプレゼントしてくれたりとか大変お世話になっている方なんですが、その時に東京喰種の話もして頂いてたようで、その海外アーティストさんが僕にすごく会いたいといってくれて。僕は作者でもなんでもないんですけどね(笑)。向こうのアーティストって日本の漫画、アニメが好きな方が多いんですね。結局その時はタイミングが合わずにお会いすることは出来ていないのですが、本当にどこからどんなきっかけでつながるかわからないなと。SNSでも漫画、映画のファン(知らない方)から多数のフォローもいただきコメントやメッセージが多かったですね。


ArtStickerは、アーティストが輝くきっかけを与えてくれる

ーArtStickerで古賀さんの作品をご紹介させていただきましたが、実際に使ってみてどうでしたか?

古賀:ユーザーの方が皆さんの言葉の力がすごいなと思いましたね。興味深い、面白いコメントがたくさんいただけるんですよ。それが一番の収穫でした。

今後の作品制作にも生かせるし、自分自身に対する気づきになるヒントをくれる方が多いので、大きなやりがいになっています。ArtStickerのユーザーさんは、本当にアートが好きで、作品をしっかりと見てくださっている印象で、こちらとしても身が引き締まりますね。
それと、ArtStickerはオンラインだけでなく、オフラインでもいろいろな企業と組んで企画をされていたりするので、アーティストにとって世に認知を広めるとても良い媒体になってくれていると思います。

企業などとのコラボレーションって、アーティストによっては賛否両論あることもありますが、僕自身、アディダスさんなどの企業とお取り組みをさせていただいたり、東京喰種の件でも大きな反響があり、作品や世の中に対する視点も広がりました。
海外では、企業とコラボレーションすることはステータスだと言われているんですよ。企業さんも自社のブランド価値を向上させたいし、大企業なんかは、アート作品が社員の脳の活性化に一躍買っているということでオフィスに合わせて作品を飾ったりしていますよね。最近ではそれを数値化する動きもあります。アート作品の力というのが強くあると信じられています。

企業もアーティストもお互いにwinwinになり、社会へ波及する。アートの力で世の中がよくなるのであれば、僕はどんどん協力していきたいと思っています。
その第一歩として、ArtStickerは大きな可能性を秘めていると思います。

https://artsticker.app/share/artists/438

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展覧会情報

古賀崇洋「凸Unevenness凹」
https://artsticker.app/share/events/detail/77

古賀崇洋「An Art Exhibition Presented By adidas Tokyo」
https://artsticker.app/share/events/detail/62

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TCMは「世の中の体温をあげる」という想いをかかげ、「Soup Stock Tokyo」等を手がけてきた遠山が構想する「新たなアート体験」に、PARTYが得意とする「デジタルでの体験設計」を融合させ、アートと個人の関係をテクノロジーで変革させ、新たな価値の提示を目指しています。

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 アーティスト支援アプリの「ArtSticker」を運営しています。 https://artsticker.app/

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